Robotic Manipulation Research

ヒトは手による日用生活品の把持や操作を、多くの場合不自由なくおこなうことができます。余りに無意識に対象物の把持や操作を行うので、ヒトはその難しさに気づかづ、難しさについて説明しようと思っても説明に困ることすらあります。しかし、同じことをロボットで行わせる問題は、非常に奥深く、かつ難しいものです。例えば、料理のレシピをロボットに与えて、ロボットに料理をさせる問題を考えてみましょう。実はレシピに書かれていることは、作業の教示の極一部で、ヒトはロボットに膨大な情報を教えなければロボットが料理を実現することは不可能と気づくでしょう。このように、ヒトは進化の過程や成長の過程で様々な物体操作に関する情報を蓄積しており、実際に何等かの作業をおこなう場合は、これらの先験知識を駆使して作業を行います。要するに、ロボットで物体操作を実現する場合、ヒトがほとんど意識することなく使っている「常識」をどのようにしてロボットに実装するかがポイントとなります。

 

なお、マニピュレーション研究に関するイントロ、ならびに近年の研究動向を知りたい場合、以下の解説記事が参考になります。

Human Motion Analysis

ヒトの手は器用な動作を容易に実現することができます。ロボットでヒトのような器用さを実現しようと考えた場合、一つのアプローチはヒトの動作を参考にすることです。本研究室では、ヒトのマニピュレーションに関する動作をキャプチャし、その動作を直接的にロボットに適用したり、動作を一旦解析してキーとなる要素を抽出した上でロボットに適用したりすることで、ヒトの器用さを実現することを目指しています。左の写真では、ヒトが料理をする場合の包丁で切る動作をキャプチャしているところです。ここでは、指の動作を取得するためにデータグローブを用い、また手の空間内での絶対位置を取得するためにARマーカを用いています。

TASK/Motion Planning

ロボットが作業を行う動作を自動的に計画する問題を考えます。このとき、以下のような情報を作業の性質やロボットの機構的な特徴を考慮することで決めなくてはなりません。

  • ハンドでの把持姿勢
  • (組立作業の場合は)組立シーケンス
  • 持ち替え戦略
  • 対象物をテーブルに置く位置/姿勢
  • ロボットの動作軌道

ここで、左図には組立シーケンスを決定するために用いるグラフ構造を示しています。このように、作業・動作計画問題ではロボットが作業するための動作をグラフ探索問題に帰着させ、上記を考慮にいれつつ自動的に決定します。

Machine Learning

ロボットがマニピュレーションをする動作を生成することを考えます。このとき、ロボットは周囲の環境との干渉を避けたり、ときには周辺の環境と干渉を許容しながらターゲットとする対象物を把持します。つまり、対象物を把持する際は周辺環境とのインタラクションを考慮する必要がありますが、この周辺環境とのインタラクションを考慮しつつ把持を成功させるために機械学習を用いることができます。左の図では、製造産業でよく想定される箱にバラ積みされた部品のピッキングの問題に対して、Deep Learningを使って把持の成否を予測しています。

Industrial Application

マニピュレーションの研究を応用する分野として最も期待されているのが、産業用ロボットです。実は、製品の製造工程のうち、部品供給、製品組立、ならびに製品検査の工程の自動化は非常に難しいと考えられています。実際、これらの工程が労働集約的であるために、人件費の高騰を招いた結果、国内の製造業の空洞化の一因となっています。特に、部品供給と製品組立の工程を自動化するためには、マニピュレーション研究を駆使する必要があります。

部品供給作業

まず、部品供給の工程に着目します。製品の組み立てを自動化しようと考えた場合、組み立て工程への部品供給をどのようにして自動化するかが問題となります。特に、製品を構成する部品点数が多くなると、自動化は困難になります。製品を構成する部品は様々な形状をしていたり、またゴムなど柔らかい部品も含まれていたりします。このような種々の部品を視覚センサで的確に認識し、かつハンドで的確に把持しなければなりませんので、これはまさしくロボットハンドによる把持の研究と結びついていると考えられます。

また、近年Eコマースが盛んに利用されています。Eコマースの物流センターでは、製品の注文が入ると、注文が入った商品を探し、その商品を人が取って箱詰めした上で消費者の元に発送しています。この商品を人が取って箱詰めする作業に関しても、上で述べた部品供給工程の自動化とほぼ同じ問題が存在し、この工程を自動化することは非常に大切な問題と考えられています。

組み立て作業

つぎに、実際に製品の組み立てをロボットで行うことを考えます。近年、きめ細かく消費者の要求に対応するために、製品の製造形態として変種変量生産が盛んに導入されています。このとき、ロボットは従来のような定型作業のみをこなしていればいいというわけにはいかなくなります。具体的には、次のような問題点を解決しなくてはなりません。

  • 教示コスト:人が双腕ロボットに動作を教示する作業は大変であり、変種変量生産で製造プロセスが頻繁に変化する場合にどのようにして動作の教示を容易にするかを考える必要があります。
  • 部品の把持:組み立て作業を行う場合、ハンドは部品を確実に把持する必要があります。このとき、通常は特定の部品を確実に把持できる専用のハンドをが良く用いられます。この場合、把持する部品が変わる度に、ツールチェンジャと呼ばれる装置を用いてハンドを交換しながら作業を行う必要が生じますが、部品点数が多くなるに従って用意しなければならないハンドの数が増大する問題を抱えています。また、与えられた部品に対してどのようなハンドを用いるかも決めなくてはなりません。
  • 難工程の存在:柔軟なケーブルを挿入する作業など、ヒトが経験と知識に基づいて行っている作業をロボットで代行する場合、ヒトが作業を行うためのコツを抽出してロボットに置き換える必要があります。